神社の境内やご神木に巻かれているしめ縄を見かけたことがある人も多いでしょう。
しかし、なぜしめ縄が飾られているのか、その意味を知っている方は意外と少ないかもしれません。
また、お正月になると、自宅にしめ縄を飾る習慣もありますが、神社のものとは見た目が異なります。
自宅用のしめ縄には色鮮やかな飾りが付いている一方、神社のしめ縄はシンプルで、縄と白い紙(紙垂)のみで構成されています。
この違いはどのような意味を持つのでしょうか?
さらに、お正月にしめ縄を飾る際、どのタイプを選ぶべきか迷うこともあるでしょう。
この記事では、しめ縄の由来やその役割、さらには種類や飾り方、飾る場所について詳しく解説します。
しめ縄の起源とその役割
しめ縄の起源は、日本神話に登場する「天岩戸(あまのいわと)」の物語に由来しています。
天照大神が天岩戸に隠れ、世界が暗闇に包まれた際、他の神々が協力して天照大神を外へ導き出しました。
その後、再び天岩戸に戻らないよう、入り口を縄で封じたのがしめ縄の始まりだと言われています。
この神話を起源として、しめ縄は神聖な空間を守る「結界」の役割を果たすものとされ、神が宿る場所や祀られる場に飾られるようになりました。
神社の境内やご神木にしめ縄が飾られるのは、それらが神域であることを示すためです。
しめ縄としめ飾りの違い
しめ縄には、「しめ飾り」と呼ばれる装飾が付いたものもあります。
両者は本来同じ起源を持っていますが、現代では飾る場所や用途に応じて区別されることが一般的です。
【しめ縄】 神社や神棚など、神聖な場所に飾られるもの。 装飾は控えめで、紙垂や縄のみが使用されることが多い。 【しめ飾り】 主にお正月に家の玄関や門に飾られ、歳神様を迎えるためのもの。 橙や裏白、稲穂などの縁起物をあしらった華やかな装飾が特徴。
しめ飾りは、しめ縄の一種と考えられますが、用途や飾る場所に応じて違いが生まれています。
お正月に飾る際には、地域の風習や家の用途に合わせて選ぶのがおすすめです。
しめ縄の種類
しめ縄としめ飾りはよく混同されがちですが、実は異なるものです。
しめ縄は主に神社や神聖な場に飾られる装飾が少ないものを指し、しめ飾りはしめ縄に正月用の装飾を加えたものを指します。
一般的に「しめ縄」と言うと、しめ飾りを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、用途や形状によって明確に区別されます。
ここでは、日本各地で見られる代表的なしめ縄の種類をご紹介します。
1. 大根しめ縄
その名の通り、大根のように片側が太く、もう片側が細くなっている形状が特徴的なしめ縄です。
独特の形状が目を引きます。
2. ごぼうしめ縄
細長い形をしたしめ縄で、その見た目がごぼうに似ていることから名付けられました。
家庭でよく使われるシンプルなデザインで、清浄な空間を作り出す役割を果たします。
3. ごぼうしめ縄+垂れ飾り
ごぼうしめ縄にわらで作られた垂れ飾りを付け、さらに正月の装飾を加えたものです。
西日本の家庭で広く使われるタイプで、華やかさと伝統を兼ね備えています。
4. 玉飾り
しめ縄を輪状にして、橙や裏白、紙垂などの正月飾りを加えた華やかなタイプです。
この玉飾りはしめ飾りの代表格で、東日本の家庭で特によく見られます。
5. 輪飾り
玉飾りをより簡素化したもので、比較的小型で扱いやすいのが特徴です。
台所や水回りなど、家庭内の特定の場所に飾られることが多く、実用性に優れています。
しめ縄を飾る場所
お正月にしめ縄を飾る目的は、歳神様を迎え入れ、その年の幸福や繁栄を祈願することにあります。
歳神様は五穀豊穣の神様とされ、そのおもてなしを通じて一年の安泰がもたらされると考えられてきました。
しめ縄は、現世と神聖な空間を分ける「結界」としての役割を持ちます。
玄関に飾ることで、「この家は歳神様を迎える準備ができています」というメッセージを伝える意味がありました。
また、家の中に迎え入れた歳神様が宿る場所として、神棚や鏡餅が用いられます。
現在では、神棚にはしめ縄を、玄関にはしめ飾りを飾るのが一般的です。
ただし、神棚にしめ飾りを飾るのは正しい飾り方とは言えません。
神様を祀る場所には、神社と同じくシンプルなしめ縄を使用することが適切とされています。
さらに、しめ縄は神棚や玄関だけでなく、火や水に関わる場所にも飾ると良いとされています。
これは、神道において八百万の神があらゆる場所に宿ると考えられているためです。
例えば、台所やトイレなどにしめ縄を飾ることで、身近な場所にも神様への敬意を表すことができます。
しめ縄の飾り方
神棚に飾るしめ縄には、大根しめ縄やごぼうしめ縄がよく使われます。
これらは「左綯い」で作られており、飾る際にはしめ縄の「綯いはじめ」(太い部分)が神様の視点から見て左側(自分から見ると右側)に来るようにするのが一般的です。
ただし、一部の地域では「綯いはじめ」を右側(自分から見ると左側)にする習慣があるため、地域ごとの伝統に従うことが望ましいでしょう。
飾り付けの前に地域の習慣を確認しておくと安心です。
しめ縄を飾る時期と期間
しめ縄は正月飾りではなく、神社では一年を通して飾られています。
そのため、神棚に飾る場合は松の内を過ぎても外す必要はありません。
しかし、玄関などに飾るしめ縄については、しめ飾りと同様に松の内が明けたら片付けるのが一般的です。
一方、しめ飾りは正月限定の飾り物です。
飾る時期は「松の内」と呼ばれる期間に合わせます。
松の内は、12月13日の「事始め」から1月7日まで(地域によっては1月15日まで)の期間を指し、この間に飾るのが適切です。
最近では、クリスマスが終わる12月25日以降に正月準備を始める家庭が多く、13日から飾る例は減少傾向にあります。
ただし、13日から飾ること自体に問題はありません。
注意が必要なのは、29日と31日です。
29日は「二重の苦」を連想させ縁起が悪いとされ、31日は「一夜飾り」となり、歳神様を迎える準備としてふさわしくないとされています。
これらの日を避け、別の日に飾り始めましょう。
しめ縄やしめ飾りの処分方法
松の内を過ぎたしめ縄やしめ飾りは、神社でのお焚き上げや地域の火祭りで処分するのが伝統的です。
これらの行事は地域によって名称が異なり、「どんど焼き」や「左義長」などと呼ばれます。
多くの場合、小正月にあたる1月15日に行われ、燃やされた煙とともに歳神様が山へ帰ると考えられています。
お焚き上げや火祭りに参加できない場合は、家庭ごみとして処分しても問題ありません。
「ごみに捨てても良いのか」と心配する方もいますが、神様がそれで怒ることはないとされています。
それでも心配な場合は、塩やお酒で清めてから半紙などに包み、丁寧に処分する方法を取ると良いでしょう。
他のごみと分け、しめ縄専用の袋に入れて捨てるのもひとつの手です。
まとめ
しめ飾りはしめ縄の一種ですが、神棚のような神聖な場所にはシンプルなしめ縄を飾るのが適しています。
一方、玄関や門には歳神様を迎えるためのしめ飾りを飾るのが一般的です。
ただし、玄関にしめ縄を飾ることも特に問題はありません。
また、しめ縄は正月飾りではないため、松の内が過ぎても神棚にそのまま飾り続けることが可能です。
一年が経過したら、新しいしめ縄に取り替えるのが理想的です。
正しい飾り方と処分方法を守り、歳神様を気持ちよく迎える準備を整えましょう。