神社の鳥居や本殿に飾られたしめ縄を目にすることは多いですが、正月の時期になると、家庭の玄関や門、会社の入り口などでもしめ縄を見かけることがあります。
では、このしめ縄にはどのような意味が込められているのでしょうか?
また、よく似たものとして「しめ飾り」がありますが、これらは同じものなのでしょうか?
しめ縄は日本の伝統的な正月飾りとして親しまれていますが、その意味や由来、正しい飾り方、飾る期間について詳しく理解している方は意外に少ないかもしれません。
この記事では、しめ縄の正しい飾り方や意味、注意すべきポイントを分かりやすく解説します。
しめ縄の正しい飾り方と適切な場所
しめ縄は、神様、特に歳神様が宿る場所に飾るのが正しいとされています。
神社の本殿にしめ縄が掛けられているのは、その場所が神聖であり、神様が祀られていることを表すためです。
同じように、家庭において神様が宿る場所といえば「神棚」が一般的です。
そのため、しめ縄は神棚に飾るのが最も適切といえるでしょう。
飾る際の向きについて
しめ縄には正しい向きがあります。
縄の太い部分(「綯いはじめ」)を向かって右側に、細い部分(「綯いおわり」)を左側に配置するのが基本です。
これは神道の考え方に基づいており、神様の視点で見たときに太い部分が左側(私たちから見て右側)にくるようにすることが正しいとされています。
地域ごとの違い
ただし、しめ縄の向きや飾り方には地域ごとの違いがあることも覚えておきましょう。
例えば、出雲大社では太い部分を向かって左側に配置するなど、地域や神社ごとに異なる場合があります。
そのため、自分が住む地域の慣習や、祀る神様に合わせた飾り方を確認しておくと安心です。
しめ縄は、神様を迎えるための大切な飾りです。
地域の伝統や風習を尊重しながら、正しい方法で飾りましょう。
しめ縄を飾る期間はいつからいつまで?
しめ縄は、正月飾りの一つとされることが多いですが、神棚がある家庭では一年中飾られている場合も珍しくありません。
しめ縄は、もともと神様が宿る場所や神聖な領域を示すために飾られるものです。
そのため、神社では一年を通じてしめ縄が見られます。
同様に、家庭の神棚にしめ縄を飾る場合も、年中そのままにしておいて問題ありません。
一方、正月限定の装飾である「しめ飾り」は、飾る期間が決まっています。
一般的には、12月13日の「事始め」から松の内が明ける1月7日まで(地域によっては1月15日まで)とされます。
この期間内に飾り付けを行い、松の内が過ぎたら片付けるのが一般的な作法です。
しめ飾りは、しめ縄に橙、南天、ゆずり葉、裏白などの装飾を加えたものです。
これらは玄関やリビング、台所、トイレなどに飾り、不浄なものを遠ざけ、神様を迎える準備を整えるための役割を果たします。
正月は、歳神様が山から降りてくるとされる特別な時期です。
しめ飾りは、その歳神様を迎え入れるための結界としての意味を持ち、松の内が終われば取り外すのが正しいとされています。
しめ縄を飾るのに避けるべき日は?
しめ縄を飾る際、注意が必要な日は12月29日と31日です。
29日は「苦(九)」が重なることから縁起が悪いとされ、31日は「一夜飾り」となり、歳神様に対して失礼にあたると考えられています。
一夜飾りは準備が慌ただしい印象を与え、神様への敬意を欠くとされるため避けるべきです。
一方で、12月28日は「末広がり」の八を含むため縁起が良い日とされています。
そのため、26日以降にしめ縄を飾る場合は、28日が最適な日といえるでしょう。
しめ縄の起源と意味
しめ縄の由来は、日本神話に登場する「天岩戸(あまのいわと)」のエピソードにさかのぼります。
太陽神である天照大神(あまてらすおおみかみ)が天岩戸に隠れたことで、世界は闇に包まれてしまいました。
この事態を解決するため、神々は岩戸の前で宴を開き、踊りや賑やかな音で天照大神を誘い出しました。
その際、布刀玉命(ふとたまのみこと)が再び岩戸に閉じこもることを防ぐために縄を張ったとされています。
この縄がしめ縄の始まりであり、結界として神聖な領域を示す役割を持つようになりました。
このような由来から、しめ縄が飾られる場所は神域とされ、神社や御神木にはしめ縄がよく見られます。
また、しめ縄の漢字表記「注連縄(しめなわ)」は、中国の伝承に由来し、「死霊を防ぎ、清めた水で区切られた縄」を意味するとされています。
これは、神聖な空間と俗世を分ける象徴ともいえるでしょう。
神棚や神社など、神様を祀る場所では一年中しめ縄を飾るのが一般的です。
一方、正月に飾る「しめ飾り」は、歳神様を迎えるための装飾品であり、松の内の期間限定で飾られるものです。
しめ縄の正しい処分方法
しめ縄を取り外す際には、伝統的に「お焚き上げ」で処分するのが理想的です。
お焚き上げは、正月飾りやしめ縄、門松などを火にくべて浄化する儀式で、地域によって「どんど焼き」や「左義長」といった名称でも親しまれています。
この行事は、歳神様をお見送りする意味が込められており、燃え上がる炎が神様を天に返す役割を果たします。
また、この火で焼いた餅を食べることで、一年の健康を祈願する風習もあります。
お焚き上げに参加できない場合は、家庭ごみとして処分する方法もあります。
その際は、塩やお酒で清めてから半紙や白い紙に包み、他のごみと分けて捨てるとよいでしょう。
このような簡単な儀礼を行うことで、神様への敬意を表すことができます。
いずれの方法であっても、しめ縄を大切に扱う気持ちを忘れずに処分することが重要です。
松の内の期間は地域によって異なる
松の内の終了日は、地域ごとに違いがあります。
関東地方では1月7日、関西地方では1月15日までが一般的です。
かつては全国的に1月15日が松の内とされていましたが、江戸時代に三代将軍・徳川家光が4月20日に亡くなったことで、月命日にあたる1月20日と正月行事の日が重なることを避けるため、関東では松の内を1月7日までに短縮する習慣が生まれたとされています。
また、冬場の火災防止のため、幕府が燃えやすい松飾りを早めに撤去するよう指導したことも影響したといわれています。
一方、関西地方では伝統的な1月15日までの期間が維持されており、地域ごとに異なる文化が今も残っています。
まとめ
しめ縄は、神聖な場所に神様を迎えるための重要な役割を果たすものです。
家庭では神棚に飾るのが基本ですが、玄関やリビングに飾る場合は歳神様を迎えるための「しめ飾り」を使用するのが一般的です。
ただし、販売時に「しめ縄」と「しめ飾り」が混同されている場合もあるため、購入時には違いを確認しておくと良いでしょう。
また、しめ縄は正月に限らず、一年を通して飾ることができます。
特に神棚に飾ったものは、松の内を過ぎてもそのまま飾り続けて問題ありません。
新しい年が明けるたびに新調し、清らかな状態を保つことが推奨されています。