寿老人は七福神の一柱ですが、毘沙門天や恵比寿などと比べると少し知名度が低く、その詳細を知らない方も少なくないかもしれません。
今回は、寿老人の名前の由来や読み方に加え、どのようなご利益が期待できるのかを詳しく解説します。
また、寿老人の見た目の特徴や真言についても触れながら、その魅力に迫ります。
「寿老人という名前は聞いたことがあるけれど、具体的にどんな神様なのかよく分からない」と感じている方にとって、参考になる内容です。
ぜひ最後までお読みください。
寿老人の起源と役割
七福神といえば、さまざまな福を授けてくれる神々として親しまれています。
その中の一柱である寿老人は、長寿の象徴として崇敬される存在です。
寿老人は、長寿をもたらす神として知られるだけでなく、中国の道教では星を神格化した存在としても信仰されています。
日本には室町時代に道教の影響を受けて福禄寿や寿老人が伝えられ、同時期に七福神の構成が整ったといわれています。
しかし、寿老人は他の七福神、たとえば恵比寿や毘沙門天、弁財天と比べると知名度が低く、その存在を知らない人も少なくありません。
さらに、寿老人は福禄寿と同一視されることがあり、時には七福神のメンバーから外されたこともありました。
その際に代わりとして加えられたのが、古典文学に登場する架空の生き物である「猩猩(しょうじょう)」です。
なお、七福神の順番は歴史的背景や文化的な慣習に基づいていますが、必ずしも固定されているわけではありません。
そのため、室町時代に伝来した寿老人や福禄寿は、七福神の中でも比較的後ろに配置されることが多いようです。
寿老人の名前の読み方
寿老人の名前は「じゅろうじん」と読みます。
一部では「樹老人」や「寿老神」と書かれることもありますが、読み方は変わらず「じゅろうじん」です。
七福神の名前はどれも比較的読みやすく、漢字変換でも簡単に表示されるため、覚えやすく使いやすい名前だといえるでしょう。
寿老人のご利益とは
寿老人は、長寿をもたらす神様として信仰されています。
その姿には、団扇(うちわ)、ひょうたん、牡鹿、桃といったアイテムが描かれることが多く、いずれも長寿や健康を象徴しています。
まず、寿老人が持つひょうたんには、不老不死の霊薬が入っているとされ、これを飲むことで永遠の命を得られるという伝承があります。
次に、牡鹿(玄鹿)は特別な存在とされ、その肉を食べれば2000年の寿命を授かると信じられています。
さらに、団扇には厄災を払いのける力があるとされ、日々の平穏や安全を象徴しています。
これらに加え、寿老人は長寿だけでなく、知恵を授ける神、家庭の調和を守る神、身体の健康を保つ神、そして厄払いの神としても崇敬されています。
古代から不老不死や長寿は人々の大きな願いであり、それゆえ寿老人への信仰も自然と深まっていったのでしょう。
また、富士山が不老不死の霊薬が祀られる山という伝承があることからも、日本では古くから長寿に関する信仰が根付いていたことがうかがえます。
寿老人の特徴と見分け方
寿老人の象徴的な特徴として、ひょうたん、団扇、牡鹿、桃といったアイテムが挙げられます。
また、外見の特徴としては、巻物が付いた杖を持ち、頭が長いという点が特筆されます。
このような姿が描かれていれば、それが寿老人であると判断できます。
一方で、福禄寿と寿老人は非常によく似た外見を持つため、見分けるのが難しい場合もあります。
たとえば、福禄寿も長い頭や巻物付きの杖を持つ点で共通しています。
しかし、福禄寿は団扇ではなく宝珠を持ち、牡鹿ではなく鶴や亀を従えているという違いがあります。
ただし、これらの特徴が明確に描かれていない場合、両者を混同することも少なくありません。
歴史的に、寿老人と福禄寿が同一視されることがあったのは、こうした外見や象徴が似通っていたことが大きな理由と考えられます。
寿老人の真言
寿老人の真言は「オン バザラユセイ ソワカ」です。
仏教における真言とは、サンスクリット語で表された「マントラ」を指します。
この言葉には、仏や菩薩の教えや誓いが込められており、「仏の真実の言葉」や「秘められた言葉」として、言葉では完全に説明しきれない神秘的な意味合いを持っています。
例えば、般若心経に登場する「羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶」は、多くの人に知られた真言の一例です。
このマントラの考え方は、ヒンドゥー教から仏教へと伝わったものとされ、古代インドの聖典『リグ・ヴェーダ』にも登場します。
一方で、呪術的な側面があるため、釈迦は一時期これを禁じていたとも言われています。
しかし、修行の妨げとならない範囲での使用が認められ、仏教儀式や修行の中で広く用いられるようになりました。
寿老人の真言も、その神秘的な力を信じることで、人々の心の拠り所となる存在です。
寿老人を祀る寺社
七福神信仰は日本全国で広く親しまれており、七福神を祀る神社や寺院も数多く存在します。
しかし、寿老人を主祭神として祀る神社や寺院は少なく、七福神巡りの一環として祀られることが一般的です。
特におすすめの寺社としては、神奈川県の妙隆寺、東京都の鷲神社や法善寺、淡路島の宝生寺が挙げられます。
これらの寺社はパワースポットとしても知られ、多くの人々が参拝に訪れています。
寿老人の信仰が他の七福神ほど広がらなかった理由を紐解くと、室町時代に禅宗の影響で伝えられたものの、民衆にはなじみづらかったことが挙げられます。
当時、中国文化に憧れていた上流階級や禅僧たちは寿老人や福禄寿といった道教の神々を積極的に受け入れましたが、一般庶民にはその魅力が伝わりにくかったのかもしれません。
その後、奈良県の春日大社や茨城県の鹿島神宮が鹿を神の使いとして崇めたことで、寿老人の信仰も日本で徐々に受け入れられるようになりました。
特に春日大社での信仰の広がりは、藤原氏の影響が大きかったと考えられます。
まとめ
寿老人について詳しく見てきましたが、七福神の中では比較的知名度が低い神様といえます。
他の神々、例えば毘沙門天や弁財天、大黒天などと比べると、関連する情報や資料が少ないのも事実です。
寿老人の起源となる道教の神々は中国で広く信仰されていましたが、室町時代の日本ではあまり広く受け入れられませんでした。
日本には古くから日本神話や自然信仰が深く根付いており、仏教由来の神々が浸透しにくい背景もありました。
しかし、寿老人が七福神の一柱として現在も信仰され続けていることは、日本文化の多様性や歴史の中で生まれた独特の融合を象徴していると言えるでしょう。