夏の土用とは?由来や習慣、過ごし方を解説

雑節

「土用」と聞くと、多くの人が「土用の丑の日」に鰻を食べる習慣を思い浮かべるのではないでしょうか。

しかし、そもそも「夏の土用」とはどのようなものなのか、なぜ鰻を食べる習慣が広まったのかについて詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。

今回は、夏の土用の意味やその期間、関連する風習について詳しく解説します。

夏の土用とは?

夏の土用とは、季節の変わり目にあたる特定の期間を指します。

この期間は、気候の変化に伴い体調を崩しやすいため、昔から健康を意識した風習が多く存在しています。

実は「土用」は夏だけではなく、春、秋、冬にも存在し、それぞれ春土用、秋土用、冬土用と呼ばれています。

これらの期間はいずれも、次の季節への移行を意味し、農作業のスケジュールや日常生活にも影響を与えてきました。

なかでも夏の土用が特に知られている理由は、「土用の丑の日」に鰻を食べる風習が根付いているからです。

この時期は夏バテしやすいため、栄養価の高い食べ物を摂取することが推奨されてきました。

土用という言葉の由来は、中国の『陰陽五行説』にあります。

この思想では、万物が「木・火・土・金・水」の5つの要素から成り立つとされ、四季にもそれぞれ対応する要素が割り当てられています。

春は木、夏は火、秋は金、冬は水とされていますが、土はどこにも属さず、季節の変わり目に配置されることになりました。

こうして、「土用」という期間が生まれたのです。

夏の土用は、夏から秋へと移り変わる前の時期にあたります。

この期間は暑さが厳しくなるため、適切な休息や栄養補給が重要視され、生活習慣を見直す良い機会とされています。

また、土用干しなどの伝統行事を行い、衣類や書物の手入れをする風習も残っています。

2025年の夏の土用はいつ?

2025年の夏の土用は、7月19日(土)から8月6日(水)までとなります。

この期間は、夏の終わりに向けて暑さがピークを迎える時期であり、昔から体調管理に特に気をつけるべき期間とされてきました。

また、「土用の丑の日」はこの期間内の丑の日にあたり、2025年は7月19日(土)と7月31日(木)の2回訪れます。

丑の日は古くから特別な意味を持ち、特に夏の土用の丑の日には、滋養のある食べ物を食べることで暑さに負けない体を作る風習がありました。

鰻を食べる習慣が広まったのも、このような背景があるためです。

この期間の決定方法は、二十四節気の「立秋」の直前18~19日間が土用とされるためです。

そのため、毎年日付が多少変動しますが、大まかに7月中旬から8月上旬にあたることが多くなっています。

現在のカレンダーでは、夏の土用は7月中旬から8月上旬にあたりますが、二十四節気は旧暦を基にしているため、現代の感覚とはやや異なる部分があります。

そのため、土用の期間に関する伝統的な考え方を知ることで、より深く季節の移り変わりを感じることができるでしょう。

夏の土用にまつわる風習

夏の土用の時期は、梅雨が明け、本格的な暑さが訪れる頃です。

この期間は、一年の中でも特に気温が高くなり、湿度も上がるため、体調管理や住環境の手入れが重要とされています。

この時期には、伝統的に「土用干し」という習慣がありました。

湿気を含んだ衣類や書物、布団などを陰干しして、カビや虫害を防ぐための行事です。

特に古い書物や木製品は湿気を吸いやすいため、風通しの良い場所でしっかり乾燥させることが推奨されています。

また、畳や障子を干す家庭もありました。

現代では、クローゼットの扉を開けて風を通したり、普段あまり使わない衣類を整理したりすることで、同様の効果を得ることができます。

さらに、エアコンのフィルター掃除や湿気対策グッズを活用することで、快適な室内環境を整えることができます。

また、梅干しを天日干しするのに適した時期でもあり、昔ながらの保存食づくりにも最適な期間です。

三日三晩天日で干すことで、より風味が増し、長期間の保存が可能になります。

さらに、しそ漬けや味噌漬けなどの保存食もこの時期に仕込む家庭が多く、伝統的な食文化を守る大切な機会となっています。

土用の丑の日と鰻の関係

「土用の丑の日」といえば、鰻を食べる習慣が有名ですが、実はこの風習は夏だけに限りません。

土用の丑の日は、年間を通じて何度か訪れ、季節ごとに違った意味合いを持つこともあります。

丑の日とは、十二支で日を数える方法に由来しており、土用の期間中に巡ってくる丑の日を指します。

このため、土用の丑の日は年に複数回あるものの、特に夏の土用の丑の日が注目されるのは、暑さが厳しく体力が奪われやすい時期だからです。

なぜ夏の土用の丑の日に鰻を食べるようになったのかというと、一説によると江戸時代の学者・平賀源内の発案によるものとされています。

当時、夏場は鰻の売れ行きが悪く、ある鰻屋が源内に相談したところ、「店先に『本日、土用の丑の日』と書いた貼り紙を掲げるとよい」とアドバイスを受けました。

この宣伝が功を奏し、鰻が飛ぶように売れるようになったことから、やがて全国に広まったといわれています。

さらに、この成功を見た他の鰻屋も次々と同じ手法を取り入れ、夏の土用の丑の日に鰻を食べる習慣が定着したと伝えられています。

また、「土用の丑の日には『う』のつく食べ物を食べると良い」という風習がもともとあり、鰻(うなぎ)はその条件にぴったり合っていたことも、この習慣が定着した理由のひとつです。

ほかにも、梅干し(うめぼし)、牛(うし)の肉、うどんなどを食べることで暑気払いをする習慣があり、地域によってはこれらの食材を使った料理が親しまれています。

さらに、鰻が栄養価の高い食材であることも、夏の土用の丑の日に食べられる理由の一つです。

鰻にはビタミンAやB群が豊富に含まれ、滋養強壮に優れた食材とされてきました。

これにより、夏バテを防ぐ目的で広く食べられるようになったのです。

現在では、鰻の他にも、スタミナをつけるために豚肉料理やニンニクを使った料理などが食卓に並ぶことも増え、時代とともに食文化も変化しています。

土用に避けたほうがよいこと

土用の期間中は「土公神(どくじん)」という神様が土を支配するとされ、この期間に土を掘り起こしたり動かしたりする行為は神聖なものを乱すとして避けるべきと考えられています。

そのため、庭や畑を掘る、家の基礎工事を行うといった作業は控えるのがよいとされ、現在でも建設業界では土用期間中の着工を避けることがあるほどです。

また、植木の植え替えや庭の整備なども、この期間が明けてから行うのが良いとされています。

さらに、土用の期間は季節の変わり目にあたり、気温や湿度の変化が激しくなることから体調を崩しやすい時期でもあります。

そのため、無理な引っ越しや転職、結婚といった大きな変化も避けるのがよいとされています。

また、重要な決断を控えることで、慎重に物事を進める機会にもなると考えられています。

土用殺とは?

「土用殺」とは、土用の期間において避けるべき方角を指します。

これは陰陽五行説に基づいた考え方であり、特定の方角への移動が凶とされるためです。

夏の土用における土用殺は「南西」とされており、この期間中に南西方向へ旅行や引っ越しをするのは避けたほうがよいとされています。

特に長距離の移動や新たな環境への適応が求められる引っ越しは、運気を下げる可能性があるため注意が必要です。

また、土用殺の影響は移動だけでなく、南西の方角に位置する場所での新しい活動開始や大規模な決断にも及ぶとされています。

そのため、できるだけこの期間は静かに過ごし、慎重に計画を立てるのがよいでしょう。

とはいえ、土用は基本的に静かに過ごすことが望ましいとされるため、旅行を計画する場合は、できるだけ吉方位を選ぶのが良いでしょう。

また、どうしても南西方向への移動が必要な場合は、事前に厄除けの方法を取り入れたり、縁起の良い食べ物を摂るなどの工夫をすることで、悪影響を和らげることができると考えられています。

まとめ

夏の土用は、季節の変わり目にあたり、昔からさまざまな風習が伝わる期間です。

特に「土用の丑の日に鰻を食べる」習慣は広く知られていますが、その由来を知ることで、より興味深く感じられるのではないでしょうか。

また、土用の期間には土を掘る作業を避けたり、健康を第一に考えて過ごしたりすることが大切とされています。

土用の習慣を活用しながら、暑い夏を元気に乗り切りましょう。

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