「土用」といえば夏を連想する人が多いかもしれませんが、実はこの期間は年に4回存在します。
春夏秋冬それぞれに「土用」があり、今回はその中の「冬の土用」について詳しく掘り下げてみましょう。
四季の区切りに登場する土用には、心身を整える意味合いが込められているとされます。
その起源や時期、食べ物、そして過ごし方について紹介します。
冬の土用とは何か?
土用という名称は、「土旺用事(どおうようじ)」を略したもので、東洋の自然哲学「陰陽五行思想」に起源を持ちます。
この哲学では、自然界のあらゆる事象が「木・火・土・金・水」という五つの要素によって構成されており、それぞれの要素が四季の移り変わりにも密接に結びついているとされています。
具体的には、春は「木」、夏は「火」、秋は「金」、冬は「水」に対応し、残った「土」の要素は、各季節の移行期間に割り当てられています。
つまり、春から夏、夏から秋、秋から冬、そして冬から春への変わり目にあたる時期が「土用」と呼ばれるわけです。
この土用の期間は、季節ごとに設けられており、それぞれおおよそ18日から19日間にわたって続きます。
これは、1年を四季に分けるとそれぞれ約91日間になりますが、五行思想に基づいて五分割した場合に1季節あたり約73日となるため、その差分18日間が「土」の期間として割り当てられたという考え方に由来します。
こうした土用は、単なる暦の区切りではなく、自然と調和して生きるための「準備の時期」として古来より重視されてきました。
2025年の冬土用のスケジュール
2025年の冬土用は1月17日(金)から2月2日(日)までの18日間です。
これは、東洋の暦である二十四節気の一つ「立春」(この年は2月3日)の前日までの期間にあたります。
土用とは、季節の節目に設けられた期間で、自然の変化に対応し心身を整えるための大切な移行期間とされています。
この土用の期間自体は、原則として季節ごとに約18日間と定められており、年によって大きく変わることはありません。
ただし、その基準となる二十四節気の「立春」「立夏」「立秋」「立冬」などの日時が毎年少しずつ前後するため、それに伴い各土用、特に冬土用の日程も微調整されるのが特徴です。
このため、毎年冬土用の開始日と終了日を確認しておくことは、季節の節目を意識した生活を送るうえでも役立ちます。
冬土用にぴったりの食材
冬の土用において縁起が良いとされる食べ物には、特定の条件があります。
それは「未(ひつじ)の日」に「ひ」の音が名前に含まれている食材、もしくは見た目に赤みを帯びた食材を選ぶという習慣です。
これは古来より運気を高め、体調を整えると信じられてきた風習のひとつです。
たとえば、「ヒラメ」や「ヒジキ」、「ヒラマサ」といった魚介類は、冬に旬を迎えるものも多く、栄養価も高いため、体を内側から温める効果があるとされています。
また、「トマト」などの赤い色をした野菜も、彩りがよく食欲をそそるだけでなく、見た目の華やかさから縁起物とされることがあります。
赤は邪気を払う色とも言われており、冬の寒さと陰の気を打ち払う象徴として重宝されてきました。
一方で、鰻といえば「夏の土用の丑の日」に食べるものというイメージが根強いですが、実は昔から四季を問わず「丑の日」には鰻を食べるという慣習があったとも伝えられています。
特に、鰻の本来の旬は秋から冬にかけてであり、この時期の鰻は脂がのっていて格別の美味しさを誇ります。
冬土用の期間中に鰻を食べることは、単に習慣としてだけでなく、寒さで疲れがちな体をいたわる栄養源としても非常に理にかなっています。
旬の食材を取り入れることで、冬の寒さに負けない体づくりを意識しながら、季節の行事を楽しむことができるのです。
冬土用の過ごし方のポイント
土用の期間中は、新しいことを始めたり、大きな決断を下すよりも、自分自身を内側から整えるための静かな時間として過ごすことが推奨されています。
この時期は自然界のエネルギーが不安定になりやすく、心身にもその影響が出やすいとされているため、無理をせず、慎重に日々を送ることが大切とされています。
特に冬は、一年の中でも寒さがもっとも厳しくなる時期にあたり、体の免疫力や代謝も低下しがちです。
そのため、温かい飲み物やスープ類を積極的に摂取し、体の芯から温めるよう心がけると良いでしょう。
また、寒さによるストレスを軽減するためにも、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かるなどして、リラックスする時間を意識的に取り入れることも有効です。
とはいえ、ずっとじっとしていると気分が落ち込んでしまうこともあります。
そんなときには、無理のない範囲で軽く体を動かすことがおすすめです。
例えば、家の中でできる掃除や不要品の整理整頓などは、心にも良い影響を与えてくれます。
身の回りが整うと、気分がスッキリして前向きな気持ちになれますし、結果として土用の期間をより有意義に過ごすことにもつながります。
土用に避けるべきこととは?
昔からの言い伝えによれば、土用の期間中には「土公神(どこうしん)」という特別な神様が地上に降りてきて、土のエネルギーを司っているとされます。
この神様は、土が乱されることを非常に嫌うとされており、そのためこの時期に土を掘ったり動かしたりすることは避けるべきとされています。
このような信仰に基づき、基礎工事や庭の掘削、土を使った造作といった「土に直接関係する作業」は慎むのが良いとされ、現代においても一部の建築業界や造園業界では、この古くからの習わしを尊重し、土用中の作業を控える姿勢が見られます。
また、季節によって土公神が宿る場所も変化するとされ、冬には特に「庭」にその神様が滞在していると信じられているため、庭での作業、特にガーデニングや植栽、整備などは避けるのが無難とされています。
こうした配慮は、自然との調和を大切にする日本の伝統文化の一端とも言えるでしょう。
さらに、引っ越しや結婚、転職など人生の大きな転機となる出来事も、土用の時期は慎重になるべきとされており、新たなスタートを切るにはあまりふさわしくないタイミングと考えられています。
こうした行動は、自然のエネルギーが不安定になりがちな時期には避けることで、より良い運気の流れに乗ることができると信じられています。
「間日」とは?土用中に活動しても良い日
土用の間にも、例外的に土に関する行動が許される日があります。
それが「間日(まび)」と呼ばれる特別な日です。この日は、土公神が一時的に天に戻っているとされており、地上にその気が存在しないと考えられています。
そのため、普段は控えるべきとされている土を掘る作業や、基礎工事、植栽、建築に関わる作業などを行っても問題ないとされています。
2025年の冬土用における間日は、以下の通りです:
・卯(う)の日
・巳(み)の日
・寅(とら)の日
これらの日は、土の気が薄れるとされ、土にまつわる行動をとるには比較的安全とされています。
どうしてもその期間中に作業を行わなければならない場合は、これらの間日を選んで行うことで、運気への影響を最小限に抑えることができると信じられています。
また、現代においても建築や造園の計画を立てる際に、こうした暦の知恵を参考にする人も少なくありません。
おわりに
冬土用は、次の季節へ移る前の「調整期間」とも言える存在です。
2025年の冬土用は1月17日から2月2日までの18日間。
この時期には、「ひ」の音がつく食材や赤い食べ物を意識して取り入れたり、静かに過ごすことで運気を整えるとされています。
土を動かす行為は避け、必要があれば「間日」に作業を行うのが吉。
冬土用は、日々の暮らしを見直し、心身をいたわるのに最適なタイミングです。