「霜月」という言葉を聞くと、冷え込みが強まり霜が降りる季節を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、実際に霜月が指す時期やその名前の由来について、どれだけご存じですか?
この記事では、霜月が表す時期の解説から、その名称の由来と意味にまつわるさまざまな説、さらに霜月に関連する伝統行事や風習、そして霜月の別名についても詳しく掘り下げていきます。
霜月とはいつのこと?読み方と背景を解説
霜月とは、11月を指す日本の伝統的な月の名称です。
「霜」という文字から、冷え込みが厳しい季節を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、「11月は少し寒いけれど霜が降りるほどではない」と感じることもありますね。
特に関東以西では、11月といえばまだ秋の印象が強いかもしれません。
実は、霜月が表す11月とは新暦(グレゴリオ暦)ではなく、旧暦(太陰太陽暦)の11月です。
旧暦と新暦の間には1〜2ヶ月ほどの差があり、旧暦の11月は新暦の12月から翌1月頃にあたります。
このため、霜月という名称が示す「霜が降りる寒さ」にも納得がいきますね。
ちなみに、霜月の読み方は「しもつき」です。
霜月の名前に込められた意味
霜月は、真冬にあたる12月から1月頃の厳しい寒さを表す和風月名です。
「霜が降りる」という言葉の通り、霜月は霜ができるほど冷え込む季節を意味します。
ところで、霜がどのようにしてできるかご存じですか?
霜は、気温が4度以下で風がほとんどない夜に発生します。
空気中の水蒸気が液体にならず、直接氷の結晶となって草木や窓ガラスに付着したものを霜と呼びます。
朝、窓が凍っていたり、地面や葉が白く覆われていたりする光景を見たことがあるでしょう。それが霜です。
また、霜柱を踏んで遊んだ懐かしい思い出がある方もいるかもしれません。
なお、似た条件が空中で起こると雪になります。
つまり、霜は地面でできる雪のようなものなのです。
霜月の語源にまつわる説
霜月という名称の由来にはいくつかの説がありますが、最も一般的なのは「霜が降りる月」という意味からきている説です。
旧暦11月の寒さを象徴する言葉として、この解釈が広く知られています。
一方で、別の語源説も存在します。古代の宮中行事「新嘗祭(にいなめさい)」は、旧暦11月の卯の日に収穫への感謝を込めて行われるものでした。
この祭りでは、新穀を神に供え、共に食べることで恵みに感謝しました。
「食物月(おしものつき)」という言葉が転じて霜月になったとする説は、この行事と深く関わっています。
さらに、冬の到来とともに日照時間が短くなり、太陽の力が弱まる様子を「物が萎む(しぼむ)」と見立て、それが霜月の語源になったという説もあります。
このように、霜月にはさまざまな視点から生まれた深い意味が込められているのです。
数字にまつわる霜月の由来
霜月の語源には、数字に着目した興味深い説もあります。
古代日本では10進法が用いられており、10を一つの区切りとして数が折り返されます。
この視点から、11は「10から折り返して最初の数」と見なされ、10以下には戻らないため「下の月(しものつき)」が転じて霜月になったと考えられています。
同様の解釈は10月の「神無月」にも見られます。
10が上限で、それ以上の数がないという意味から「上のない月(かみのないつき)」が転じて「神無月(かんなづき)」と呼ばれるようになったという説です。
霜月の別名や異称
旧暦11月には、霜月以外にもさまざまな風情ある別名や異称があります。
これらの名前には、季節の変化や伝統的な行事に根差した意味が込められています。
以下にいくつか代表的なものをご紹介します。
神帰月(かみきづき)
10月に出雲大社へ集まった神々が、再び各地へ戻る月です。
そのため、「神々が帰る月」という意味を込めて神帰月と呼ばれています。
神楽月(かぐらづき)
収穫を祝う祭礼で神楽が奉納されることにちなんでいます。
農村の景色と神楽の音色が響き渡る、収穫感謝の季節を象徴する呼び名です。
凋む月(しぼむつき)
太陽の光が弱まり、自然が静かに萎縮する様子を表現しています。
季節の変化を繊細に捉えた名称です。
雪待月(ゆきまちつき)
本格的な冬を迎える前に、雪が降るのを待つ心情を映しています。
冬の到来を予感させる情緒豊かな呼び方です。
仲冬(ちゅうとう)
「冬の中ほど」を意味し、寒さが本格化する時期の象徴として用いられます。
冬の厳しさを思わせる呼び名です。
このように、霜月にはさまざまな異称があり、それぞれの名前が季節感や古来からの習慣を反映しています。
日本の月名に込められた美しい感性を楽しむきっかけにもなるでしょう。
霜月にまつわる主な行事
11月の祝日として最も広く知られているのが「勤労感謝の日」(11月23日)です。
この日を「働く人への感謝の日」と捉えている方も多いでしょうが、その起源は古代の「新嘗祭(にいなめさい)」にあります。
新嘗祭とは、天皇が新米やその年に収穫された穀物を神々に捧げ、共に食することで五穀豊穣を感謝する伝統的な宮中の重要行事です。
この祭りは現在でも皇室によって受け継がれています。
しかし、戦後のGHQの政策により、新嘗祭は祝日としての扱いから外され、その代わりに「勤労感謝の日」が設けられました。
この祝日は「勤労を尊び、生産を祝い、互いに感謝し合う日」とされていますが、本来の精神である農作物の恵みに対する感謝の気持ちも忘れずにいたいものです。
勤労感謝の日は、単なる労働者への敬意を表す日というだけでなく、自然の恵みと豊かな収穫に感謝を捧げるという、日本の古くからの価値観を反映しています。
11月の代表的な行事
勤労感謝の日以外にも、11月には多彩な行事や祝日があります。
まず11月3日は「文化の日」です。
この日は明治天皇の誕生日に由来し、「自由と平和を愛し、文化を進めること」を趣旨としています。
多くの美術館や博物館が無料で開放され、文化や芸術を楽しむ絶好の機会です。
普段訪れる機会のない場所へ足を運んで、新たな発見を楽しんでみてはいかがでしょうか。
続いて、11月15日には七五三の祝いがあります。
この行事は、子どもの成長を祝福し、健やかな未来を願う日本の伝統行事です。
七五三はもともと関東地方で始まったとされ、3歳の子どもが髪を伸ばし始める「髪置きの儀」、5歳の男の子が袴を初めて身につける「袴着の儀」、7歳の女の子が帯を締め始める「帯解きの儀」といった節目を祝いました。
現在では、性別に関係なく3歳、5歳、7歳の節目にお祝いを行うことが一般的になり、地域ごとに異なる風習も見られます。
まとめ
霜月とは旧暦の11月を表す言葉で、寒さと霜の降りる季節を象徴しています。
しかし、新暦の11月はまだ秋の雰囲気が残る時期。
霜月という名前に少し違和感を覚えるのは当然です。
なぜなら、旧暦の11月は新暦では12月から翌年1月にあたるためです。
霜月やその他の和風月名を調べてみると、古代日本人の季節感や文化への深い思いが見えてきます。
ぜひ楽しみながら調べ、自分だけの発見をしてみてください。