日本の伝統的な月の名前である「和風月名」の一つに「卯月」という呼び方があります。
あまり聞き慣れない方もいるかもしれませんが、「卯月」とはどの月を指すのでしょうか?
この記事では、卯月の由来や意味を詳しくご紹介するとともに、この時期にまつわる風習や行事、さらには卯月以外の呼び名についても掘り下げていきます。
卯月はいつのこと?正しい読み方は?
「卯月」は和風月名のひとつで、現代の暦では4月にあたります。
「和風月名」と言われてもピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「3月は弥生」「10月は神無月」「12月は師走」といった呼び方を学校で習った記憶がある方もいるのではないでしょうか?
古代日本では、月を単純に「1月」「2月」と数えるだけでなく、季節の移ろいや自然の特徴にちなんだ名前が付けられていました。
「卯月」は、そのような月名のうち、4月にあたる名前です。
「師走」や「神無月」のように広く知られている月名と比べると、「卯月」という名前はあまり日常で耳にする機会がなく、何月のことなのか知らない方も多いかもしれません。
また、「卯月」という言葉自体を今回初めて知ったという方も少なくないでしょう。
そのため、「卯月」は和風月名の中ではややマイナーな存在ともいえます。
ちなみに、卯月の正しい読み方は「うづき」です。
「卯」という漢字が卵に似ているため、「たまごづき」や「からんづき」と誤って読む方もいるかもしれません。
しかし、漢字をよく見ると右側の囲いの中に「、」が入っていないことに気づくはずです。
正しくは「うづき」と読むので、間違えないよう注意して覚えておきましょう。
卯月の意味
卯月は4月を指す和風月名として知られていますが、厳密には旧暦の4月を表しています。
旧暦とは、現在採用されている太陽暦(グレゴリオ暦)が導入される以前に使われていた暦のことで、日本では太陰太陽暦である天保暦が使用されていました。
つまり、「旧暦」とは天保暦を指します。
旧暦は現行の新暦より1~2ヶ月ほど遅れるため、旧暦の4月は新暦では5月から6月頃に相当します。
この時期に咲く「卯の花」が名前の由来とされ、「卯の花の咲く月」が短縮されて「卯月」となったと考えられています。
卯の花とは、アジサイ科ウツギ属の植物である「空木(うつぎ)」に咲く白く小さな花のことです。
「空木」という名前は、枝の中が空洞になっている特徴に由来しています。
卯月の名前の由来に関する説
卯月の名前には、「卯の花の咲く月」という説のほかにも、いくつかの由来が考えられています。
1. 稲作に関連する説
旧暦の4月(新暦の5~6月)は稲の田植えが行われる時期であることから、「植える月」が転じて「卯月」と呼ばれるようになったとする説です。
2. 「卯」の意味に由来する説
「卯」という音には、「初め」や「生まれる」という意味があるとされ、新しいことが始まる季節や生命が芽吹く時期を象徴しているという説です。
3. 十二支に基づく説
十二支の4番目が「卯」にあたることから、4月に「卯月」という名前が付けられたという説です。
十二支を順に並べると、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥となり、「卯」は確かに4番目に位置しています。
ただし、他の月に十二支を用いた名前が見られないため、この説はあまり信憑性が高くないとされています。
卯月の名前には、日本の季節や文化の豊かさが反映されており、その由来を考えるだけでも日本の伝統文化の深さを感じることができます。
卯月と「おから」にまつわる面白い話
卯月の由来に登場する「卯の花」。
これは植物の花を指しますが、他にも思い浮かぶものはないでしょうか?
そう、「おから」です。
おからは豆腐を作る過程で生じる豆乳の搾りかすで、栄養価の高さから近年では健康食品として注目されています。
このおからが「卯の花」と呼ばれることがあるのをご存じでしょうか?
そのため、「卯月の由来はおからに関係しているのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、実際には無関係です。
おからが「卯の花」と呼ばれる理由は、その名前の由来にあります。
「から」という音が「空」を連想させるため、否定的なイメージを避けて、白いおからを卯の花に見立てて名付けられたのです。
したがって、卯月とおからの「卯の花」には直接的なつながりはありません。
卯月の別名
4月には「卯月」のほかにも、季節や暮らしにちなんださまざまな名前があります。
それぞれの名前が当時の生活や文化を反映しているため、見ていくだけでも興味深いです。
以下にいくつかの呼び名をご紹介します。
木葉採月(このはとりづき)
桑の葉を摘む季節を表しており、養蚕が始まる時期を象徴しています。
夏初月(なつはづき)
旧暦では4月が夏の始まりにあたるため、「夏の初めの月」という意味でこの名が付けられました。
孟夏(もうか)
「孟」は「初め」を意味し、「夏の最初の月」を表します。
鳥待月(とりまちづき)
暖かい気候とともに渡り鳥が戻ってくる季節を象徴する名前です。
乏月(ぼうげつ)
季節の変わり目で体調を崩しやすい時期を表しており、食欲が減りがちなことも反映しています。
これらの名前から、古くから日本人が自然や季節に寄り添って暮らしてきた様子を垣間見ることができます。
卯月の時期に見られる風習
春といえば、日本各地で行われる桜の花見が思い浮かびます。
この花見は、ただ美しい桜を楽しむだけでなく、古来から日本の文化として大切にされてきました。
現在、花見と言えば桜を指しますが、奈良時代には中国文化の影響を受けて梅の花を楽しむ「花宴」が行われていました。
しかし、平安時代になると梅に代わり桜が主役となり、桜を愛でる風習が定着したとされています。
一方、庶民の間でも古くから花見が行われていましたが、宮中の花見とは趣が異なります。
桜が咲く頃が田植えの適期であるため、桜の木の下で豊作を願い供え物を捧げるという実用的な側面もありました。
このように、桜は日本人の生活や文化に深く根付いている象徴的な存在といえるでしょう。
卯月に行われる主な行事
4月は、新しい環境へのスタートを迎える季節です。
入園、入学、入社といった人生の節目が訪れることから、「出発」のイメージが強い時期でもあります。
しかし、4月始まりの文化は日本独自のものです。
日本ではかつて農民が収穫した米を現金化して納税していたため、予算編成が1月では間に合わず、4月を年度のスタートとする制度が生まれました。
この会計年度の仕組みに学校も倣い、4月始まりの新学期が定着したのです。
一方、世界ではおよそ7割の国で新学期が9月や10月に始まります。
これは日本では2学期が始まる時期で、入園や入学といった新生活のイメージはあまり結びつかないかもしれません。
しかし、東京大学が秋入学の導入を検討した際には話題となりました。
こうした動きが広がれば、海外留学や国際的なキャリアを目指す人にとって、新たな選択肢が増えることでしょう。
将来的には、日本でも春入学の在り方が見直される可能性があるかもしれません。
まとめ
卯月は4月を表す和風月名であり、「卯の花が咲く月」がその名前の由来とされています。
また、「卯月」以外にも季節や生活の特徴を反映したさまざまな別名が存在しています。
普段あまり耳にする機会の少ない和風月名ですが、それぞれの名前には当時の自然や人々の暮らしが息づいています。
これを機に、「卯月」だけでなく他の和風月名にも目を向けてみてはいかがでしょうか?
言葉の奥深さや日本文化の魅力を新たに発見できるはずです。