「睦月」という言葉を聞いても、どの月を指すのかすぐに思い出せない人も少なくありません。
本記事では、睦月が表す月やその名前の意味、名前の由来について掘り下げ、さらに睦月にまつわる別称や季節の風習・行事もご紹介します。
日本の伝統文化が息づく和風月名の魅力を知り、より深い季節感を楽しんでみましょう。
睦月はどの月?読み方は?
睦月(むつき)は、日本の伝統的な和風月名で、現在の1月にあたります。
現在広く使われている太陽暦(新暦)が導入される以前は、太陰太陽暦(旧暦)が用いられていました。
旧暦の1月を指していた睦月ですが、旧暦と新暦の間には約1か月から1か月半のずれがあり、現代の暦では睦月は1月下旬から2月中旬ごろの季節にあたります。
そのため、旧暦の睦月と新暦の1月では季節感が異なりますが、新暦の1月も「睦月」として親しまれています。
カレンダーや年賀状などで「1月(睦月)」と書かれていることもありますね。
ちなみに、睦月の「むつき」という響きは柔らかで親しみやすい印象を与えるため、女の子の名前としても人気があります。
睦月の意味
「睦」という漢字は「仲睦まじい」という言葉に見られるように、親しみ合うことや和やかな関係を表します。
睦月が1月を指すようになった背景には、新年に家族や親戚が集まり、祝いの席で和やかなひとときを過ごす風景があり、これが「睦び月」と呼ばれたことが転じたものとされています。
ここで注目したいのが新暦と旧暦の違いです。
旧暦では1月が立春の時期と重なり、立春こそが新年の始まりとされていました。
そのため、旧暦の元日と現代のお正月は異なりますが、どちらも家族が集まって祝うという意味で「睦月」の名にふさわしいのです。
現在でも中国などでは旧正月(春節)を2月ごろに盛大に祝い、家族が集まる風習が続いています。
このように、旧暦の考え方では立春を迎える1月が新たな年の象徴であり、睦月という言葉の意味がより深まります。
睦月の起源と語源
睦月という名前の起源については、さまざまな説がありますが、決定的な由来は分かっていません。
最も広く知られる説は、「睦び月」が転じて「睦月」となったというものです。
この説は、新年に家族や親戚が仲睦まじく集う姿が名前の由来であるとしています。
他にも、「実月(みつき)」という説があります。
この説では、旧暦の1月には稲の実を水に浸け、田植えの準備を始めていたことから名付けられたとされています。
しかし、旧暦の1月は現代の2月中旬にあたるため、少し時期が早すぎるとの意見もあります。
さらに、「元月(がんげつ)」、つまり1年の初めの月が「むつき」に変化したという説もあります。
始まりの象徴として考えると、こちらも説得力のある由来と言えるでしょう。
睦月の別名
1月を表す「睦月」のほかにも、日本には風情あふれる和風月名がたくさんあります。
その中から、特に代表的なものをご紹介します。
初春月(はつはるつき)
旧暦では1月から3月が春にあたり、春の訪れを迎える最初の月として名付けられました。
太郎月(たろうつき)
「太郎」は「初め」を意味し、1年の始まりであることからこの名前が付けられています。
諏月(すうげつ)
「諏」という字には、人々が集まり語り合うという意味があり、親しみと和やかさを感じさせます。
甫歳(ほさい)/甫月(ほげつ)
「甫」は苗を育てる畑を指し、田植えの準備を始める月という意味を持ちます。
孟春(もうしゅん)
「孟」は「初め」を意味し、春の始まりを象徴する言葉です。
このほかにも、次のような美しい呼び名があります。
・霞初月(かすみそめつき) ・初空月(はつぞらつき) ・嘉月(かげつ) ・始和(しわ) ・建寅月(けんいつげつ) ・肇月(ちょうげつ) ・陽春(ようしゅん) ・良節(りょうせつ) ・条風(じょうふう) ・春王(しゅんおう) ・首歳(しゅさい)
これらの月名には、それぞれ新年の始まりや春の息吹を感じさせる意味が込められており、日本の豊かな四季の情緒を表現しています。
伝統的な風習
1月にはお正月以外にも、古くから受け継がれてきた風習が数多くあります。
その代表例が「七草粥」です。
1月7日には、せり、なずな、はこべら、すずな、すずしろ、ほとけのざ、ごぎょうの七草を刻んで粥に入れ、一年の健康と無病息災を願う習慣があります。
この日は「人日の節句」と呼ばれ、五節句のうち最初にあたる節句です。
五節句とは、奇数が重なる日を厄日として厄払いを行う行事です。
1月7日の人日節句を皮切りに、3月3日の桃の節句、5月5日の端午の節句、7月7日の七夕、9月9日の重陽の節句が続きます。
実際には1月1日も奇数の重なる日ですが、元日は特別な日とされ、1月7日が節句の日と定められました。
睦月に行われる行事
1月11日は「鏡開き」として広く知られています(地域によっては1月15日や20日に行う場合もあります)。
鏡開きとは、年神様にお供えした鏡餅を下げて食べ、その加護を授かる行事です。
包丁で切るのは縁起が悪いとされ、木槌や手で割ることが伝統的な作法です。
その他にも、初詣や書き初め、成人の日といった行事が1月の風物詩として親しまれています。
また、凧揚げや福笑い、かるたなどを家族で楽しむのもお正月の定番です。
一方で、受験生にとって1月は大学入試が始まる緊張の時期でもあります。
大学入学共通テスト(旧・センター試験)が行われるため、試験の年はお正月をゆっくり楽しむ余裕がないこともあるでしょう。
このように1月は、新年を祝う行事に溢れると同時に、慌ただしさを感じる月でもあります。
まとめ
「睦月」は、親しい人々が和やかに集う様子を象徴する1月の和風月名です。
普段は忙しくて帰省できない人も、お正月は家族と過ごす絶好の機会です。
次の新年には、遠く離れた家族のもとを訪ね、睦月の由来に思いを馳せながら、大切な人々と温かな時間を過ごしてみませんか。